中性脂肪が脂肪細胞にたくさんたまった状態が「肥満」です。
中性脂肪はいわば「肥満のもと」。しかし食習慣などを改善すれば、
中性脂肪は減らすことができるのです。


中性脂肪とは?
体内にある脂肪の1つで貯蔵用のエネルギー

 血液中の脂質というと、コレステロールを思い起こす人が多いと思います。しかし、高脂血症の診断でもチェックされる「中性脂肪(トリグリセリド)」も重要な血中脂質です。
 この中性脂肪は、脂肪細胞に蓄えられている、貯蔵用のエネルギーです。脂肪細胞の中には、白い粒子状の中性脂肪が詰まっています。肥満の人は、詰まった中性脂肪の量が、それだけ多くなります。太った体というのは、中性脂肪が脂肪細胞に過剰にたまった状態ということになるのです。
●余ったエネルギーが中性脂肪になる
 私たちが日々活動するためのエネルギーは、食事から得ています。その摂取エネルギーが、消費エネルギーよりも多いときには、余ったエネルギーが中性脂肪に合成されます。
 主なエネルギー源は、食べ物に含まれる糖質の「ブドウ糖」と、脂肪が分解されてできる「遊離脂肪酸」です。これらは血液のよって全身に運ばれますが、使用されなかったものは、肝臓に戻り、中性脂肪に合成されます。
 肝臓で合成された中性脂肪は、脂肪細胞に蓄えられます。そして、食事が十分にとれなかったり、激しい運動をしたりなどで、エネルギーが不足したときに、再び遊離脂肪酸に分解され、エネルギー源として利用されます。

中性脂肪値が高いと...
肥満になるだけでなく、糖尿病などの生活習慣病を招く
 血中の脂質は、コレステロールだけが悪者にされがちです。しかし、肥満の予防はもちろん、生活習慣病の予防の点からも、中性脂肪の値にも、十分注意する必要があります。

●インスリンと深い関係がある
 では、なぜ肥満の人は、中性脂肪が高くなっているのでしょうか。これは、血液中のブドウ糖を処理する「インスリン」というホルモンと深い関係があります。
 食事をすると、膵臓からインスリンが分泌されます。過食で肥満している人は、多量のブドウ糖を処理するために、インスリンもたくさん分泌されます。
 インスリンは、肝臓での中性脂肪の合成も促進するため、インスリンがたくさん分泌されると、合成される中性脂肪の量も増えます。そのためリポたんぱくリパーゼの働きが追いつかず、血液中の中性脂肪の値が上がりやすくなるのです。

●中性脂肪が多いと...
 血液中の中性脂肪が多いということは、それだけ太りやすいことになります。
 それ以外にも、中性脂肪が多いと、健康上さまざまな問題が生じます。
 中性脂肪が分解されてできる遊離脂肪酸は、インスリンの働きを阻害しますので、血糖値が下がりにくくなり、糖尿病になるおそれがあります。
 また中性脂肪の多い人は、コレステロール値も高いケースが多く、それにより動脈硬化が促進されます。最近では、中性脂肪にも、動脈硬化を促進させる、直接的な要因があるといわれています。
 したがって、中性脂肪値の高い人は、その値を改善していく必要があります。

中性脂肪を減らすために
食事を中心とした生活改善を無理なく続けることが大切
 血中の中性脂肪を減らすには、食事で摂取するエネルギー量に気をつけることが大切です。
 糖質は、ブドウ糖として利用されたり、グリコーゲンとして貯蔵されたりするほか、中性脂肪に合成されるものもあります。特に、中性脂肪になりやすい砂糖を多く使ったお菓子などは、できるだけ控えるようにします。果物の果糖も中性脂肪になりやすいので、食べ過ぎに注意してください。
 肉類は、できるだけ脂肪の少ないものを選ぶようにしましょう。脂肪の多い肉は、網焼きにしたり蒸したりすると、脂肪分が落ちます。こうした調理上の工夫でも、脂肪の摂取を抑えられます。
 またアルコールは、適量を守りましょう。おつまみも脂肪分の多いものは、控えるようにしてください。

●生活習慣の改善は続けることが大切

 下のケーススタディーのように、食生活を中心とした生活改善を行えば、1週間くらいでも血中の中性脂肪は下がります。
 ただしそれで安心して生活が元に戻ってしまえば、中性脂肪値はまた増えていきます。糖尿病をはじめとする生活習慣病を防ぐためにも、生活習慣の改善は、長く続けていくことが大切です。

         中性脂肪を減らす  食事のポイント
ポイント@  食品のエネルギー量を知ろう!
ドーナツ約2/3個 大福1/2個 ビール大瓶
約1/3本
日本酒(徳利)
1/2本
ピーナッツ
約17g
ポテトチップス
約18g
ご飯軽く一杯 バナナ1本 りんご大1/2個

ポイントA  食品選びのコツを身につける
牛肉
部位 脂質(g)
(100g中)
肩ロース 27.5
もも 7.6
サーロイン 31.0
ヒレ 15.7
豚肉
部位 脂質(g)
(100g中)
肩ロース 22.6
ばら 38.3
もも 7.4
ヒレ 4.5
鶏肉
部位 脂質(g)
(100g中)
むね 12.3
手羽 15.8
もも 14.6
ささ身 0.5
CHECK!
同じ肉でも部位によって、脂質の量が異なる。できるだけ脂質の少ない肉を選ぶようにしよう。脂質の多い部位を使う場合は余分な脂質を落とすように調理法の工夫を。

ポイントB  調理方法を工夫して低脂質のメニューに
CHECK!
油を使わない調理方法でも、薬味やスパイスなどを上手に利用すれば、おいしく食べられる。ごま、からし、こしょうなどのほか、しょうが、青じそや、レモン、ゆず、すだちなどの柑橘類を取り入れてみよう。
野菜は油で炒めるより、ゆでておひたしや和え物などにすると、かさが減り、たっぷり食べられる。 鶏肉などは油で焼くより、蒸し鶏にするとヘルシー。たれで味の変化をつけて。
揚げ物は衣が油を吸うため、高エネルギー。網で焼くと、余分な脂質が落ち、香ばしく仕上がる。 炒め物は、「少量の油で短時間」が原則。火の通りにくいものは下ゆでを。材料の大きさもそろえて。


ケーススタディ〜お酒が好きで外食の多いKさんの場合〜
 最近太り気味でウエスト回りが気になっている、Kさん(49歳)。会社の健康診断を受けたところ、血液中の中性脂肪が279mg/dlという、たいへん高い値でした。
 Kさんはお酒が好きで、毎日のように同僚と飲みに行き、おつまみで夕食をすませていました。また、仕事の合間に、自動販売機で炭酸飲料を買って飲む習慣もありました。仕事はデスクワーク中心で、ほとんど歩くこともありません。
 ある日のKさんの摂取エネルギー量は4016kcal。40歳代男性のエネルギー所要量は2400kcalくらいですから、これでは中性脂肪の値が高いのも無理はありません。
 そこで、医師の指導のもとに、生活の改善を試みました。昼食は奥さんのつくったお弁当を持参し、夕食はなるべく家でバランスよく食べるようにしました。お酒は2日に1回を厳守。また、炭酸飲料の代わりに緑茶を飲むようにしました。さらに、駅まで歩いて通勤し、階段を利用するように心がけました。
 こうして生活習慣の改善を1週間続けて、中性脂肪を測ってみると、なんと85mg/dlに減っていたのです。医師からは「頑張っていますね。やめると元に戻るので、根気よく続けてください」とアドバイスを受けました。


肥満は、「糖尿病、高血圧、高脂血症」などの生活習慣病を招く、重要な要因です。これらの病気はどれも、自覚症状がほとんどないまま進行し、やがて動脈硬化による心臓病や脳卒中を引き起こします。また、動脈硬化を原因とする病気だけでなく、全身にさまざまな合併症を招きます。肥満の人は減量と心がけるとともに、生活習慣病についてよく知っておき、定期的に検診を受けておきましょう。ここでは、「糖尿病、高血圧、高脂血症」について解説します。

糖尿病 高血糖により、血管が障害され、さまざまな合併症を引き起こす
高血圧 血管に負担がかかり、脳卒中や心臓病などを招くことも
高脂血症 血液中に余分な脂質がたまり、動脈硬化を促進する
治療 食事や運動などの生活習慣の改善が基本